CD制作後記

こんにちは。仲村真貴子です。

「CDが完成しました!!」

…っと言って、早数日。

こんなに自分の演奏を聴いて
こんなに自分の写真を見て
こんなに自分の書いた文を読んで…

そんな時間は
今まであんまりなかったなぁ…

と思う、制作期間でしたね。

写真とか。
500枚の「私」です。
見てると
わかんなくなっちゃうよ!!!
…とも思うのですが。

「コレ。」

と思うものは
意外にそれほど時間が掛からず
決まる不思議もありました。
(…とか言いながら、
結構相談もしたよなぁ…。笑)

今にして思えば
「録音」と
「リアル」というものに関して
特に思いを馳せた時間でした…
とか思うのは、
「今」この瞬間は
「リサイタル」というものが
少々難しいからかもしれませんが…

言いたいことは、そこではなく。

いわゆる「スタジオ録音」というものを
本当にちゃんと経験したのは
ドイツでのこと。

日本にいた頃は、
今ほど録音・録画審査が主流ではなかったし
さしたる必要も感じなかった…
というのが理由。

発表会のビデオでカワイイ!!

みたいな盛りは、
とっくに過ぎた訳で。(笑)

どちらかと言えば、
レッスンでの録音は「禁止」で育った。
まぁそれは、
その場の集中力とか記憶力を養う上では
本当に役に立ちましたが。

要するに。
録音との付き合い方、
特に「自分の録音」との付き合い方が
よくわからなかった。
今にしてみると、
そんな風に思います。

「自分の録音」の
「聞き方」がわからない。
っていうか、
何を聴いたらいいのか
ワカらない。

「録音」って
「粗探し」だと思っていたから。

ドイツでのスタジオ録音では
よくわからずに
初めての時は
前の日にクリスマスマーケットで
盛大に飲んで、
当日ろくに指慣らしもできずに
あわあわする…
という、失態も犯しました。(笑)

いつもの本番のように
サクッと弾いて
クリスマスマーケっ…
なんて思っていましたが。

無観客のスタジオ、
というか小さいホールには
スピーカーが1つ。
そこから録音技師(=Tonmeister)の声で
指示が飛んでくる。

「何段目の何小節目、もっとビビットに」
「…えーと、まだハッキリしない」
「…えーと、もっと輝かしく」
「…」

リストの「ダンテを読んで」とか。
そんなこんなで繰り返し、
結構ハードな録音。
暗譜しなくてもよかったじゃん…
とか、秘かに思ったのは
内緒の話ですが。
(…あ、ダンテを「暗譜じゃない」とか。
逆に無理か。笑)
けれど、その「経験」としては
楽しかったですね。
そのうち公開しようかしら。

トラムで偶然会った歌い手に
「明後日、録音するから、お願い!」
と言われて、
「明後日」ってドイツ語、知らなければよかった…
と思ったり、

エチュードの録音を
「じゃあ4日後!!」
と言われて、
真っ青になったり、
いろいろありましたが。

おかげで
音源審査で
「落ちない録音」
を作ってもらいました。

一方で、
録音の難しさというのは
いくらでも作り込めて、キリがないこと。

もう1つは
「どこに向かって」弾いたらいいのか
わからないこと。

Tonmeisterの声はするけど
スピーカーはある意味バーチャルだし、
いわゆる「人のエネルギー」というものを
全く感じることができない。

なんか真空管の中にいるような、
けれどそれが
緊張感を伴う大事な演奏…
という難しさがありました。

「人のエネルギー」
誰も知ることのない、
その「瞬間」

このあたりが
ライヴと録音の大きな違い。

つまりは、
「ライヴ」と「録音」とは
完全に似て非なるもの。
むしろ「対極」にあるもの

…そのことをちゃんと実感したのが
今回のCD制作だったかなぁ…。

…続く。

それでは、また!
仲村真貴子

Photo by Taira Tairadate

CD詳細についてはコチラ
お世話になった村中大祐さんより