リサイタル後の心境 〜その1「アンコールの曲目①」〜

こんばんは。仲村真貴子です。

「リサイタル」のような大きなものに向かってみると
小さなことに一喜一憂というか
感情が揺さぶられるたくさんの出来事がありました。

裏話、時には問題発言もするかも知れませんが、
また勝手な連載を始めようと。

本番後が苦手な私は、
今回は意外に「冷静」でした。

突き抜けるような「達成感」とは違うけれど
どこかで「納得」しているような。

準備を通じても、
確かに正直かなりキツかったけれど
意外に「冷静さ」は保っていたような気もしつつ。

ある意味では
X JAPAN号泣事件も折り込み済み。(笑)
まぁ、一種のバロメーターですね。

一日経ってみると
気が抜けたのか少々風邪気味なのと
恒例の頭痛はありつつ、
まずまず元気です。
(…という、術後の経過報告のような。笑)

さて。。
何から行きましょうかね。

まずは、
まだどこでも語っていない

「アンコールの曲目について」

今回のアンコールは2曲。

ドニゼッティ=リスト:
オペラ「ランメルモールのルチア」の回想
ショパン:
ノクターン 作品27-2

ドイツでの愛すべき尊敬すべき二人の師匠への
オマージュです。

はじめに「ルチアの回想」について。

リストのオペラ編曲作品はかなりの数があるけれど…
というか、リストは作品自体がかなり多い作曲家であるにもかかわらず、
今日頻繁に演奏されている曲は割と限られているような気がします。
まだ、意外な掘り出し物が多い。

「アイーダ」もそれほど超有名という訳ではないし、
「ルチア」に至っては本番で演奏されるのを聴いたことはないですね。

元々オペラが好きで、
ある時期に曲を探しまくっていた時に
行き着いた曲です。

「えー、こんな曲あるんだ!」
「人が弾いてるの、聴いたことない!!」

という具合。

狂乱の場で有名な「ルチア」の、
2幕の六重唱を、リストが編曲した曲。

間にリストらしいアルペジオやカデンツがありつつ。
基本的には割と「そのまま」。
正直、ちょっとウケますね。(笑)

ちょっとビックリするような前奏は、
実際の六重唱の直前のルチアの歌詞、
“Fulmine”
という言葉からリストが
インスピレーションを得たのではないか?
と思っています。
「雷」とか「電撃」といった意味のイタリア語。
だから、ちょっとビックリするような前奏。

リストが編曲したこの曲には
「サロン風小品」
という副題がついていて、
アンコールとか、ちょっとソロを弾く時にいいな…
と、ずっと思っていたのですが。

なぜ演奏機会が少ないか。

ズバリ。
「弾きにくい」(笑)

もうねー、これビックリ!
結構イケそうだ!とか思って、
あるいは「弾きたい」という意欲の元の
希望的観測だったかも知れませんが。
やってみたらなかなか弾けるようにならず。

最後まで怖かった。

でもねー、一人オペラ、楽しいの。(笑)
「なんて過酷な時間!!」
と、6人が異口同音に語る重唱が楽しくなってしまって。

念のために申し上げると。
「ルチアは喜劇ではありません」。

ルチアの恋人役のエドガルドは、
大先生Alejandro Ramirezのレパートリー。

リストのこの曲が弾きたいから、
あるいは「ルチア」は実際伴奏でも弾く機会があるから…
と楽譜をおねだり。

コロンビアからドイツ経由で来た楽譜には
何とも言えず特別な想いがあります。
拍子だの、音程だの、リズムだの、
謎の書き込みと歌い回しに想いを馳せつつ、
アンコールにこの曲を選びました。

Ramirezとの出会いは
「偶然」。

ひょんなことから彼のクラスで弾くことになり…

「あれ??
なんかこのおぢさん、歌上手いな…」
と。(笑)

それで経歴を見てみたら、
どうやら元々医者だし、
何か結構スゴい活躍していたっぽいし、
実はヤバいヤツかも知れない…と。(笑)

経歴に目が眩んだから彼のクラスで弾きたかった訳ではなくて。
自分が
「何かこの人すごいな…」と思ったら、
「これくらい」すごい人だった…
というのが実感。
多分、私もそろそろ自分が「いい」と思うものを
「いい」と言えるような、
「自分の感覚」を信じたくなっていたのかも知れません。

別に有名になりたいから音楽している訳ではないけど。
世に言う「超一流」の人たちが、
何を考えて、
どんな世界を見ているのか。

それを出来れば見てみたい…
と思ったのは、
おそらくこのおぢさんのせいですね。
そこに、髪の毛一本でもいいから
「近付きたい」と思うようになってしまった。

「一度くらい、
自分自身が、
自分の可能性に賭けてみたくなった…」

これが、今回のリサイタルに寄せる私の想いです。
秘かに、でもハッキリとあったもの。

自分を信じることのできる「自信」が欲しい…
と思ってきた私の、
その答えの鍵はここにあるかも知れません。

連載は続きます!

それでは、また!
仲村真貴子

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