こんばんは。仲村真貴子です。
…ようやく早寝早起きを、規則正しい生活をしようと思ってきているのだけど。
昨日ばかりは、ショックなニュースで寝るのが遅くなった。
Marcello Giordaniが56歳で亡くなる…
(サイトは英語です。)
https://www.hollywoodreporter.com/news/marcello-giordani-dead-famed-tenor-was-56-1245694
ニューヨークのMETを目当てに、3泊5日オペラ4本と言う旅行をしたことがあって、目当ては「ニューヨーク」と言うよりも、「オペラ」。(笑)
演目は、
「トゥーランドット」
「トスカ」
「皇帝ティートの慈悲」
「ファウスト」
…今でも「また観たいなぁ」と思う、魅力的なオペラ揃いのステキ・ラインナップ。
その時の「トスカ」でカヴァラドッシを歌ったのがジョルダーニ。
誠実で、いい意味でストイックな印象。
私が勝手に3大テノールを選ぶとしたら、入れるかな。…その位、記憶に残っています。だから、本当にショックで悲しい…
メトに行った時の思い出話としては…
・風邪で耳が変なまま、ニューヨークで過ごし、帰国した
・メトロポリタン美術館では、入口のエジプトコーナーが面白くて、先に進まない。(笑)リアル「アイーダ」。
・ホテルが高層階で、エレベーターにビビる。
1番の思い出は、「時差ボケ」!!
よく、「東に行くのが大変」なんて言うけれど、初めてのニューヨークでは本当にひどくて。もちろん、オペラ鑑賞にも影響が。
・「トゥーランドット」の3つ目の謎かけを、聴いた記憶がない。(笑)
・「トスカ」では、2幕の拷問のシーンを知らずに、”Vittoria!!”の声で目覚める。(笑)
・「ファウスト」では、老人がいつ、どうやって若返ったのか、知らない。(笑)
・気が付いたら、アラーニャが白スーツ。
・…実は、みんなどうやって若返ったのか知らないのだけど、寝落ちがバレるために訊けない。
・結局、誰も知らない。(笑)
でも、本当にどれもコレも楽しかった。
ピアニストを目指しておきながら、実際に足を運んだ回数としては「オペラ」が圧倒的に多い私。それでも、歌い手になりたいと思ったことは特になく、それは今も変わらず。よく歌い手に間違われるし、「まきこがもしも歌ったら?役は何?」みたいな妄想は結構楽しいけれど。(笑)
「歌の年」と言えば、シューマンが幸せの絶頂期に歌曲を量産した時期のことだけれど、私が集中的に、足繁く「オペラ」に通っていた頃は、その反対。ピアノに行き詰まっていた時期とちょうど重なる。特に高校生から、人よりも長〜い受験生生活をしていた頃。苦しかった頃。「オペラが好きだった」と言うのはあるけれど、「逃げ」でもあったと思う。ピアニストのリサイタルは、「お勉強」みたいに思えて、窮屈だった。あるいは、「どうせ私はこんな風に弾けない」と卑屈になってしまって、ピアノのリサイタルが楽しくて幸せだった記憶は、正直あまりない。時には、巨匠に向かって「私だったらこうは弾かない」みたいな粗探しもしてしまうことがあって、しかもそれはタブーに思えて、余計にしんどかった。
歌い手になる気もなければ、
オケの楽器でもないし。
その点、オペラは他人事で気楽に楽しめたんだと思う。
全く無関係という訳でもないし。
一人ではなく、大勢とか、
歌詞があること、
舞台や衣装があること
…そんなところも、魅力的に映ったのだと思う。
何よりも、理解不能なほど変な話、バカな人物ばっかり登場するのが「オペラ」ってヤツだ。(失敬)
そんなどいつもこいつもバカばっかりなヤツが、
全力で愛を歌い、
呪いをかけ、
密告したり、裏切ったり、手紙を書いたり、薬を飲んだり、
あんなことやこんなことをする…。
その、バカなヤツの「全力」っぷりに、慰められていたのかもしれない。
そして、音楽と相まって、時に自分の記憶とリンクして、勝手に泣いちゃったりする。
「前にコレ見たとき、私悩んでたな…」
「あの頃より、ドイツ語わかるようになってる!
こんなこと言ってたんだ…(涙)」
…云々。
オペラがきっかけのご縁は今に至るものもあって、ご縁とは不思議なもの…を通り越して、オペラ並みに奇妙キテレツなものである気もする。
「来世で結ばれよう」
と歌うのは、「アイーダ」のラストシーンである。
リスト編曲のこの曲を譜読みし始めた頃は、ちょうどドイツでお世話になった声楽科の教授、Katharina Dauが亡くなった頃だった。ラダメスは、ジョルダーニの十八番でもある。
来世で結ばれるのは、悪くない。
でも、来世で結ばれるよりも、生きた今この瞬間に立ち会える方が幸せではないだろうか。もうジョルダーニを生で聴くことが出来ないのは残念だけど、それよりも生で聴くことの出来た瞬間に感謝しつつ。
「この瞬間」に立ち会うために演奏会に足を運んで、
「この瞬間」のために演奏できるように。
Marcello Giordani, riposi in pace…
それでは、また!
仲村真貴子
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