こんにちは。仲村真貴子です。
「ピアニストはお尻から」
…と言う言葉があるかどうかは知りませんが。
ピアノを弾くにあたって、
唯一にして最大の道具は
「椅子」です。
椅子なしでは、弾けない。
かと言って、
じゃあなんでもいいや!
リビングのパイプ椅子!!
とかいう訳にもいかず、
意外に大事なものなんですね…。
そんな、
「座っている」職業、ピアニスト。
地震の揺れは
「指先」よりも
「お尻」で感じる…
と言う訳です。
さて。
本番の時のあれこれを書いていたら、
「本番の時に椅子を直すのも
ドキドキしそう…」
と言うコメントを頂きました。
…実に。
ピアノの椅子は、
大きく分けて
「背もたれ付き」と
「背もたれなし」の2種類。
タイトルの画像は公によく使われるもの…
と言うか、
「ピアノの椅子の写真」って言うのが
探せば見つかることに
今、ちょっと感動してる。笑
写真の、「背もたれなし」の椅子は
よく似ているけれど、
高さの調整のやり方が違う。
上の方は「回す」タイプ。
下の方は「油圧式」と言う、
レバーを引き上げて上げ下げするタイプ。
リサイタルとか、ホールでよく見かけるのは
このどちらかが多い。
日本では回すタイプが多いかな。
最近増えてきた「油圧式」は
ヨーロッパでは主流で驚き。
お値段は油圧式の方が、大分高い。笑
以前は15万位していたけど、
近頃半額以下のものも見かけるように…
と言うわけで、購入。
回すタイプに比べると、
高さの調整が非常にラクです。
この、俗にいう「ベンチタイプ」の椅子、
安定感が良くて
軋む音がほぼしないことがいいですね。
まれに音がすることはあるけど、
個体差…と言うことで。
「背もたれ付き」の椅子は、
試験とかコンクール、発表会で多いかな。
理由は高さの調節が簡単だから。
ネジを回すタイプは、時間がかかる。
「油圧式」はそこまで一般的では無いので、
まだ無いこともある。
そこで、
このストッパーを外して上下させて、また止める
「背もたれ付き」は
短時間で調節できる。
「前に弾いた人が、めっちゃ椅子低かった!!」
とかでも、
別に簡単に上がります。
コレが、回すタイプだとすごく大変!!
上げる方が大変です。
…まぁそう考えると、
「背もたれ付き」の椅子は
「教育目的」と言う側面があるかもしれません。
例えば小さい子とか、
横長のベンチタイプだと
どこに座ったらいいかわからない。
ちょっと、右とか左に寄ってしまう。(経験者。)
それと、やっぱり調節に時間がかかるので
家ならば自分だけでいいけれど、
発表会とかだと破壊的に時間がかかる。
小さい時の発表会の椅子…
ベンチタイプだった気がするけど
どうだったかなー、
自分で直した記憶もなければ
親や先生が出てきた訳でもなかったと思うので
「こんなモンでいいや!」
って感じだったかも。
小さい子の場合は
基本大体高めにしてあるし、
そもそもそう言うのがワカらナイ!
ってこともあるかも。
うちはベンチタイプを常備していましたが、
コンクールはやっぱり「背もたれ付き」が主流なので
慣れるために買いました。
…と言う訳で、
現状うちにはピアノ椅子が4脚。笑
背もたれ付きが1つ、
ベンチタイプが2つ、
油圧式が1つ。
「自分で椅子の高さを直す」
と言うのは、
当たり前だけど自己責任。
…と言う訳で、
本番のときはやっぱり結構ドキドキします。
高さ、どれくらいだっけ?
うーん、斜めになってる気がする…
ちょっと低いかな?
もうちょい高い方がいいかな?
…って言うか、何回も直しすぎじゃない??
…笑。
こんな具合です。
それから、
椅子を直すときに
客席にお尻を向けないでね!!とか。
椅子に手を挟まないでね!!とか。
コレが意外に多いので要注意です。
高さはわかんなくなっちゃうので、
個体差はあれど
背もたれ付きの場合は
「上から4段目」とか
決めていました。
コレが、
回すタイプ、特に油圧式は
全く目安がなくて分からないので
やっぱりコチラはある程度大人むき…かも。
今でこそ「油圧式大好き!」ですが
ドイツに行った当初は
かなり戸惑いました。
「別に椅子の高さなんて
そんな神経質になるものなワケ?!」
…とか思った、そこのアナタ!!
そうなのです。
「椅子の高さ」が合わないと
弾きにくい…と言えば話は早いんですが、
変なところに力が入ったり
動きにくかったりするんですよ。
あるいは、音が鳴りにくい。
もっと厳密に言えば、
高さで視界も変わるし、
音を聴く場所も変わってくる。
極端に言えば
靴のヒールの高さとか、
服の素材なんかでも微妙に変わってきます。
こうなると、
「椅子の高さが大事」と言うよりも
「座り方」とか「姿勢」が大事!
って言う話。
いい演奏をするために
「椅子の高さを気にする必要がある」
と言いたい訳です。
もっとも
「高い方がいい」
「低い方がいい」
と言うのは本当にひとそれぞれ。
結局のところ、
体格によるものが大きいと思いますね。
ただし、
それを自分で「知っておく」必要がある。
名だたる著名なピアニストたちは
総じて「椅子は低め」だと思います。
ホロヴィッツとか。
ルプーとか、普通の椅子で弾くし。笑
理由は単純、
「大柄だから」。
手とか、バカでかい訳ですよ。
そうすると、
低い方が安定するんだと思いますね。
誰だったか、
特注で足を短くした椅子を
持ち歩いてた!って話も。
実はこれは私には理解不能な話なんですが、
私の師匠Pistoriusが
「椅子がこれ以上下がらないから
弾きにくい」
って言ったことがあるんですね。笑
ビックリしすぎて
ひっくり返りそう。笑
悩みとは人それぞれ、
椅子が高いと
足がピアノの下に収まらないんだそうです。
巨漢だから。
(身長も体重も194?!みたいな。)
私は体はそんなに小さく無いですが、
手は小さいのでやや高め。
低いと腕や手、指を持ち上げるのに
労力を使ってしまって
力が必要になったり、
だから疲れてきたりする訳です。
つまり、
重力とか「重さ」をうまく利用したい。
だから高めの方が
音を出すのに要領がいい。
大柄の人が低めなのは、
「足が収まらない」と言うのもそうだけど
余りある重さを逃がしている…
と言うのもあるかもしれません。
手が大きいなら、
別に苦労なく届いてしまうだろうし。
(…却って邪魔で困るらしい。)
…そんな訳で、
「椅子」とか「座り方」が大事なのは
やっぱり「いい演奏」をするため。
体を使う職業のアスリートっぽい側面からすれば
腰痛とか怪我の防止、
とも言えると思います。
曲やコンディションによって
微妙に上げ下げするし、
上げ下げすることで
微妙な自分の調子を感じ取ったり…
侮ることなかれ、
「ピアノ椅子」。
意外に奥深いところでございます。
それでは、また!
仲村真貴子
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