こんにちは。仲村真貴子です。
師匠Andreas Pistorius
アンドレス・ピストリウスとの出会いは、
言ってみれば単なる偶然。(笑)
願書を出しまくって、
先生探しもさほどせずに
入試を受けまくり、
焦っていたところに。
知り合いの先輩が
「自分の先生が、
入試でいい演奏をしたら
取るって言ってるよ。」と。
自分としても、
取ってくれる先生のところに
行った方がいいかな?
と言う思いがあって
行くことにした。
(…実はMannheim出願時には
希望の先生は、
他の先生の名前を書いて出していた。笑)
とはいえ、
見ず知らずの先生につく度胸は
結構なものかもしれない。(笑)
人と親しくなるのに
半年くらいかかる私は、
最初は大変だった。
…多分、先生も。
Pistoriusは、
一言で言うならば
ピアノが上手い巨漢のオジサン。(笑)
風貌からすれば、
あんまりピアノ弾きそうじゃない。
ちなみに、
超機械オタクでもある。(笑)
旧東ドイツの出身で、
自身の留学先はモスクワ、
奥さんはロシア人。
「ロシア」と言う国は
縁遠いと思っていたのだけれど、
ドイツで関わった人は
意外にロシア近辺に縁がある人が
多い。
レッスンは、
なーんと週1回2時間!
「大変だね、お互いに。」
とは、西川先生の弁だけれど、
ネタ切れの小ネタ披露祭りになることも
たまに…あ、結構あった。(笑)
まぁ、小ネタを仕込むのも
大変だけど。
ソリスト科に入ってからは、
Teilzeit(=タイルツァイト)と言って
期間を伸ばしていたので
その分レッスンは1時間。
1時間だと今度は足りなすぎるので
まぁ、いろいろやってもらっていた。(笑)
1時間半とか、本番前多め、とか。
本当に、
よく面倒を見て頂きました。
前述の通り、
私が欲しかったものは
「テクニック」。
先生が変わると
独特のメソッドを習得させられる…
なんて話もよく聞くので、
その点では少々物足りなさを
感じていました。
当初は。
Pistoriusは
テクニックと音楽を
完全に一緒に考える人で、
実はレッスンの中に
かなりテクニック要素が
多く含まれている。
あるいは、
指遣いのこだわりが
謎にすごい。(笑)
自分なりのロジックや
法則を持っているんです。
ここは何度だからこの指遣い、
この音型は同じパターンの指遣い、
右と左、親指が同じ位置に来るように、
もっと楽に弾ける指遣いは?
毎回同じ失敗をするのは、
指遣いが悪いからじゃない…??
夜中に指遣いが書かれた
楽譜が送られてきたことも。(笑)
理にかなった指遣いのおかげで
譜読みは早くなるし、
暗譜は飛ばないし、
ミスは減るし、
すごーい、
おもしろーい!!
…と思ったのですが、
実は言いたいことは
そこではなく…。
師匠、巨漢なので。
その通りにできないことが
度々。
そうしたら。
「自分のやり方を見つけること。
ヒントにはなると思うけど、
当てはまらないこともあるはず…。」
うーん、なるほどね。
付き合いが長くなって
親しくなった頃は、
「ここが弾くにくい」
「この3度のトリルどうするの?」
とか、訊くように。
「そう言うのは、
自分で考えて工夫しないとね…」
と言いながら、
満更でもなく教えちゃう、
あの感じが
ちょっと好きでしたね。
ある時。
クライスレリアーナの
1曲目だったかな。
「疲れてどうしても弾けない。
テクニックがないから?
鍛えないと、ダメ?」
と言う、私。
「テクニックが
足りないと思ったことは、
ない。」
…え??!!
「確かに、手は小さいと思う。
でも、テクニックがないと思ったことは、
ない。」
…
「だから、
鍛えるんじゃなくて、
あるものをうまく使うこと。
工夫すること。
必要なものは、
全部持ってるはず。」
鍛えるんじゃなくて、
あるものをうまく使う…
テクニックって、
ずっと「鍛える」ものだと
思っていたんですよね、私。
実際、
そう言うトレーニングも
やっていた時期があるし。
けれど、
「あるものを使う」。
この考え方。
随分ラクになりました。
「1つだけ言うなら、
腕はもっとうまく使うべき。
指を鍛えればいいと思うかもしれないけど、
手が小さいと特に傷めやすいから。
大きなところで小さい部分を
助けるような感覚が必要。
でも、大きな手にも悩みはあるんだよ。
隣の鍵盤を触ってしまうし、
黒鍵の間には指が入らないから
器用なことはできない。
どんな手にも、
悩みはあるからね。」
…
師匠のところで
よかったな…
と思うところは、
人の顔色を見て、
萎縮して弾くところがあった私が、
少しは恐れることなく
弾くことを取り戻せたこと。
「あるものを使うこと」
テクニックの考え方として
救われたけれど。
もちろんテクニックの話では
ありません。
自分の持っているものを
使うこと。
自分の持ち物を
自分がちゃんと知ること。
仙人のように
達観しているところがあって、
私がサボろうが、
不安定だろうが
お見通し。
でも
「…いいから、弾け!」
と言う、あの感じ。
彼の元で得たものは、
小手先のテクニックではなく、
お守りのように大事なもの、
と言う気がしています。
願わくば、
それがどこかで誰かの
お役に立ちますように…
それでは、また!
仲村真貴子
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