おうたのおはなし6〜歌を聴くこと〜

こんにちは。仲村真貴子です。

「職業は、何か?」

と訊かれたら
まぁ「ピアニスト」と答えますが…

それは全てでもあり、
一部でもありますね。

音楽家でもあり、先生かもしれないし、
女性だったり、日本人だったり、
娘だったり、社会人だったり、
芸術家だったり、
宇宙人かもしれないし、
いろいろです。

自分で自分の価値を決めることが
「プロ」だとするならば
その意味で職業は
「ピアニスト」かな?と。

しかーし、
最近特に、前よりも輪をかけてさらに
「歌い手へのスカウト」が
ハンパない。笑

「歌手に間違われる」とか
本番で「今日、何歌うの?」って訊かれた、とか
ネタはいろいろあるんですが。
写真を撮ってみたら、
「え、第九のチラシ?マーラー?
ドン・カルロ??」
みたいな、歌い手的チラシのイメージ、とか。
「ワーグナー歌えそう。
ブリュンヒルデとか?エルザがいい?」とか。

おーーーい。
「声が決まってる」って
どーゆーことよ???

まぁ「ローエングリン」、
ワーグナーの作品で大好きなんですが。
コロンビア人の某おぢさんRamirezと
“Mein lieber Schwein 🐷 “
私の愛するブタよ…
というギャグをやっておりました。
本当は”Schwan”🦢 、白鳥さんです。

…冗談はさておき、
自分がピアニストだとして
少々困る質問があるんですね。

「好きなピアニストは、誰?」

…えーと。
誰?だろう。。。

これが歌い手だったら
湯水のように結構出てくるんですが。
ピアニストねぇ。
誰だろう??
る、ルービンシュタイン?とか??

小さい頃は同じ先生についていた
5つ年上のお姉さん、
あやかちゃんに憧れていました。
兄が4つ年上なので
小さい頃の「5つ年上」って
かなり年上に見える。
そんな訳で、
早く追いつきたかった。

その後は、
同じ茨城出身の大崎結真ちゃん。
結真「ちゃん」とか言っちゃっていいのかな?
恐れ多いけれど、
水戸に住んでいた頃に
同じ舞台に立ったことがあります。
ご一緒した頃から
もう雲の上のような存在。
いやー、すごいなー!!
…っていう一言なんですが、
すごすぎちゃって
何かを盗もう、とかも
思ったことがない。

…そんな訳で。
ピアニスト。
誰が好きだろう…。。。

ピアノを聴くと、
ちょっとお勉強とか
粗探し感があるのも事実で
ちょっと悔しくなったり
意地悪な自分に嫌気がさしたりすることも
正直あります。
申し訳ないな…と思いつつ。。

まぁそんな訳で。

「歌を聴くこと」

私は何か新しい曲に取り掛かるときに
その作曲家のピアノ「以外」の曲を
聴くことが
なぜか習慣になっています。

意地悪な聞き方をしないから、
というのが一つ。苦笑

それから
「自分の感覚」として
ざっくりイメージを捉えられるから。
音楽はピアノだけじゃないし。

ベートーヴェンだったら
交響曲とか弦楽四重奏とか。
ブラームスとかシューマンだったら
やっぱり室内楽の曲とか。

…と書いておいて。

結局、その作曲家の
「歌」を聴くことが
圧倒的多数です。

ドビュッシーもフォーレも
まず「歌曲」、
シューマンもブラームスも
「歌曲」とかレクイエムとか、
バッハだったら
何か謎のカンタータ祭りとか。
モーツァルトだったら
絶対オペラ。

ピアノという「楽器」を通すことは
ある意味都合のいい媒体で、
別に何も知らなくても
音を出して弾くことはできる。

でも、
「言葉」から感じられる
インスピレーションとか、
息遣いや「声」といった
ある種の生々しさを感じるのは
意外に難しかったり
ともすればそういったものが
全くなかったりもする。

…もしかしたら、
私がピアノを弾くことで迫りたいのは
崇高な芸術とか
美意識に高さよりも
声を震わせて命を懸ける、みたいな
結構生々しいものかもしれない。

それと、
差別的な意味ではもちろんなく
「声」を聴いて
お国柄や個性を想像するのが、好き。
何の前情報もなしに聴いて、
「この人いいなぁ…」
と思うのが
大体南米なのは
フェチズム的な意味で
多分何かあるんじゃないか?
と思う。笑

そんな訳で南米のテノール、
マルセロ・アルヴァレスよね!!

…とか思ってたら、
ドイツで会った某おぢさんは
コロンビア出身でした。

「わーい!!トトロに会っちゃった!」
じゃなかった、
南米のテノールに会っちゃった…
みたいな感じで、
たまにトトロに見えておりました。笑
それよりも、
中身はマスター・ヨーダって感じだけど。

地球の裏側や異国の興味に、
距離感なく迫れるもの。
「音楽」とか
「人の声」っていう
得体のしれないものは
遠いものへの憧れに
距離感なく現実的にアクセスできるもの…
だったりするのかもしれません。

朝起きて、
「声出なかったら、どうしよう…」
と思う生活は耐えられないので
多分歌い手にはならないと思うけど。
えー、ワーグナー??
悪くないんじゃない??
とか思う自分がいて、
ちと困る。笑

それでは、また!
仲村真貴子