外国にまつわる、よもやま話15〜求めるのは「速さ」か、「深さ」か?〜

こんにちは。仲村真貴子です。

「先生に怒られた」
みたいなネタ話は、
ゴシップ的側面として
なかなか面白いかもしれませんね。(笑)

…あれ?
反省の色がないかしら??

師匠に怒られた話、その2は
ドビュッシーの「版画」を
譜読みから3週間で
本番で弾いたこと。(笑)

コレ、
全く自慢話ではないです。

ドイツに住んでちょうど1年が過ぎた頃、
本番のペースはわかっていたし
それに合わせて
弾きたい曲と
弾けそうな曲を
考えていくことは
ある程度習慣にはなっていた。

ポジティヴな意味で
チャレンジとか、失敗ができるなら
短期間で曲を仕上げるのも
ありかな?
という、
言い訳じみたスピード勝負をしてみたくて。

要は休みの間、
日本で全く弾かなかった!っていう、
それだけの話ですが。(笑)

「次の本番に『版画』弾きまーす!」

みたいな感じで呑気に
レッスンに登場して、
楽譜を見ながら、
めくりながら弾く私。

「本番まで3週間。
いつまでに
何を
どうやって本番をやるのか、
説明しろ。」と。

「取り敢えず、
来週までに暗譜しまーす。」
みたいな私。

それから、
内声の出し方、
内声大事だからね、
外だけじゃないからね、
そのための指遣い、
指遣い決まると暗譜も速いし
ミスも減る、
ペダルとタッチのスピード、
ペダルは踏み換え過ぎないようにね、
「キレイ」と「汚い」の「境目が」
いちばん美しいんだからね、
速いところの練習方法は
アクセントをずらしていくこと、
薬指には気をつけて。

…まぁ、こんな具合に
いう通りにしたら弾けるよなぁ、
うん、うん納得!

と思って、本番も弾いて、
結構満足。

わーい!!
早く仕上がった!!!

…と思ったら。

本番直後に
「2度とこんなことするな。」と。

「何でも速くやろうとし過ぎ。
言われた通りにやってできることは、
わかっているし、
求めていないから、やめてね…。」

…コレに懲りることなく、
実はまぁ同じようなことを6回くらいは
やっていたと思う訳ですが…。

今も割とそうだけれど、
日本は、というか周りはみんな
本当に速くて器用な人が多い。
彼らは人知れぬところで
努力を重ねているのかもしれませんが、
譜読みも早ければ、
仕上がって本番にかけるのが速い人が
本当に多い。
だから、レパートリーも多い。

私もそうなりたくて、
とにかく速く、
いろんな曲をやりたい、
同時並行はあんまり得意じゃないから
その代わりピッチを速く!
という思いがあった。

勉強の仕方や、必要なことは
1つではないから。
じっくりやることも必要だし、
ある程度の速さも必要。

Pistoriusは、
どちらかといえば
「速く、雑にやることを覚えるな!」
という感じだったと思いますね。
多分、それは当時の私に対して、であって、
他の人には「量こなせ!」
と言ってたかもしれない。

けれど、
結局はそれも
「自分のやり方を見つけること」
ということに集約される訳で、
どちらも必要、
答えはきっと1つじゃない。
(…ミスチルの『Any』か?笑)

今、当時の「版画」の録音聴くと
やっぱり3週間の演奏してますね。(笑)
「3週間にしては、まとも」
っていうのは、
別に必要ないもんね…。

短期間で詰めていくと、
伸び率が急だから
出来た気になってしまう。
「先週、暗譜してなかったのに、
今日は暗譜で通せたよ!」みたいな。
確かに進歩ではあるけれど、
ゴールはそこではない訳で。

今は師匠の言葉が身にしみて、
改心しております…
とは正直、言い難いですが。(笑)

思い出のお説教も含めて、
ポジティヴなチャレンジと「失敗」を
させてくれた、
そのことが貴重だった気がします。

“Erstmal ausprobieren”
まず最初は、試すこと。

…そうですね。
今思い出した。

それでは、また!
仲村真貴子

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