おうたのおはなし3〜モーツァルトの魔法〜

こんにちは。仲村真貴子です。

「うたをうたうこと」

私自身が「うたをうたうこと」の経験といえば
それほど身近なものだった訳でもないんです。

例えば、合唱部がある学校には行ったことがない。

小学校も中学校も
「合唱部」と言うものはなかった。
まぁ、ちょっと不思議な世界でもありますが。

小さい頃は、「童歌」を歌うステージに
参加した記憶があるような。。。
歌うことは、好きでしたね。
「犬のお巡りさん」とか、
当時のピアノの先生の伴奏がうますぎて
ビックリしたこともあります。

例の「ソルフェージュ」は、
語源の通りフランス語なので
フランスの教材がたくさん。
いやらしいほど難しいものもあるんですが
メロディーや和音がステキで、
未だに覚えている曲があるくらい。

先生が弾いてくれて、歌う、
少し大きくなってからは
「弾き歌い」もやっていました。
ピアノ弾きながら、歌う。

楽しかったですね、いい曲だし。

ただ、「言葉を歌う」と言うよりも
「旋律を歌う」と言う感覚の方が
もしかしたら強いかもしれません。

旋律を歌う。
メロディーを歌う。

ピアノが上手くなるために
「うたをうたう」
みたいな、ちょっとお勉強的要素は
ありつつ…
でも、好きだった。
けど、歌い手になろうと思ったことは、
なかった。

その後も「歌い手になりたい」と思ったことは
特にないんですが。。。
「歌ばっかり聴く」のは、
やっぱりきっかけがあります。

…正直なところ、
ピアノの演奏を聴くと「お勉強」な感じがして
窮屈だったのもあったんでしょうね。笑
仮に演奏を聴いて
「あんまり好きじゃないな…」
とか思っても、文句とか言えないし。

それと、
「音楽は、ピアノだけではない」
と言う意識は、今でも強烈にあります。
ピアノ曲やピアニストだけしか知らないのって、
それだけじゃないよね、ちょっと寂しいよね…
と言う気がする。

小さい時は水戸芸術館から
歩いて3分くらいのところに住んでいて
庭で遊ぶかの如く演奏会には
よく足を運んでいました。

寝ちゃったものも、数知れず。笑

ドレスを着ないピリスとか、
照明がやたら暗いポゴレリッチとか、
印象に残ってますね。

ある時、
水戸の市民オペラみたいなので
「魔笛」をやったんですよ。
日本語でエレクトーンだったんですが
友達のお母さんが出るから行こう!
ってなって。

ほら、モーツァルトって
子供心になんとなく可愛いんですよ。
ド〜ミ〜ソ〜シ〜ドレド〜とか、
早く弾きたいなー!って感じで。
それに、「魔笛」って結構メルヘンだし。

…と言う訳で、何か面白かったんですよ。
よくわかんなかったけど。

それで、
じゃあ言語はどうなってるのか?
って感じになって、
ドイツ語のオリジナル版のCDを購入。
もう、それを超聴きまくっていた訳ですよ。

寝る時はバッハのゴールドベルクか、
ベートーヴェンの後期のソナタが定番だったんですが
次のブームは「魔笛」ですよ。

それで、例の水戸芸術館って、
アートの展示スペースもあって
展覧会は小学生とか無料で入れて
それも行きまくってたんですが。

ある時、
「ホックニー展」をやってまして。

デイヴィッド・ホックニーって言う
画家・芸術家ですね。

名前は誰だか全然知らなかったんですが
舞台のセットの模型があって
それがカラフルでポップで
気に入りまして。

…で、それも「魔笛」。

「魔笛」の演出、と言うか
舞台を手掛けているんですよね。

展示会場で映像が流れていて、
もう全部見てやろう!!
みたいな勢いで、
画面の前に陣取る人になりまして。。。

一部分じゃなくて全部見たいじゃん?やっぱり。

「ビデオが欲しい!!」

って、大騒ぎもしました。

その後、当時のピアノの先生から
レーザーディスクを頂きまして。
同じの2枚あるから、あげる、ってことで。

当時、全盛期だったエディタ・グルヴェローヴァの名前は
先生からも聞いていて
CDも買ったりしていたので
嬉しかったですね。

…で、それが「魔笛」です!!!

そんな訳で、
我が家のオペラブームの始まり始まり。

モーツァルトの超マジックですよ。

日本語であらすじはざっくり掴みつつも
「魔笛」って…
まぁ「魔笛」に限らず
オペラって
話の辻褄が合わないことがしょっちゅうで。
段々話の内容とかどうでも良くなってきて
「歌詞カード」みながら聞いてました。笑
ドイツ語とか、知らないです。

でも、
「ここで、こんなこと言ってる?」
みたいな。
「こんな、発音なの?」
みたいな。

音楽が好きで
「言葉」と言うものに興味を持って
それを認識したのは
この頃かもしれません。

私自身のターニングポイントとして
大事な時にはこの「魔笛」が登場します。

東京で、
あるいはマンハイムや
チューリッヒで。

そこに、後につながる不思議な経験に
繋がっていくことの、多いこと。

ドイツ語がわかるようになってからは
聴いていると
「あ、ここでこんなこと言ってたんだ!」
とわかるのが嬉しいですね。
ちょっと、進歩してるかも、って感じられること。

昔っから好きなのが
2幕の三重唱。
パミーナ、タミーノ、ザラストロの。
(…なんか書きながら、照れてきた。笑)

版や演出によって、
たまに演奏順が変わる曲…ってのは
別にどうでもいいんですが。
「魔笛」の一番好きなところって言ったら
絶対コレ。

“Lebe wohl”とはあらたまった別れの言葉で
また会うかどうか、わからない。
けれど、
後ろでザラストロはちゃんと
“Wir sehen uns wieder.”
と言っているのですね。

“Wir sehen uns wieder.”
また会おう。

これに気付いた時は
少々鳥肌が立ちました。

そんな訳で
「魔笛」ってミラクル。

今は会えなくても
また会える時を心待ちにしつつ。

それでは、また!
仲村真貴子