おうたのおはなし1〜はじまりは高校生?!〜

こんにちは。仲村真貴子です。

「…歌い手と一緒に演奏して
何年になるの??」

…この、答えに少々困る質問をしてきたのは
初対面のRamirez。
ドイツの3年目で声楽科の伴奏助手を始める、
最初の挨拶に行った時の質問。

(…え??何年間??
どうやって答えればいいのかな、
え、高校生の時から??
そんなにやってる???
でも、途中受験とかで
全然やってなかった時とかも
あるしな、
別に歌の伴奏専門みたいな感じとも
違うしな…
どうやって答えたらいいのかな…)

「だから、何年間??」
「…」

一応、念のために言えば
ドイツ語で答えるのに困った訳じゃないと思う。
多分、日本語でも、困った。笑

自信がなかったんでしょうね。
「高校生の頃からなので
人生の半分くらいやってます。」
…とか答えて、
ヘタクソだったらイヤだな、
みたいな
クソみたいなプライドもあったんだと思う。

それよりも、
下手で足引っ張ったら
申し訳ないな、と思った気がする。

伴奏「助手」って
一応仕事だしね。やばい。

そう、いわゆる「歌い手」と
初めて本番なんかで演奏したのは
高校生の時。
だから、かれこれ20年近くになると思う。
ピアノを始めたのが3歳で
結構の分量を占める。
…という、驚き。

ありきたりなことを言えば、
音楽高校に進学して
よかったことはコレだと思う。
他の楽器や歌を専攻する友達に
早くに会えること。
個人的には
音楽家を志すからと言って
必ずしも「音楽高校」がいいと思う
立場ではなく、
普通高校で別のことを勉強したり
音楽家「以外」の友達に囲まれることを
羨ましくも思うけれど。
まぁ、いいところは、そこだよね、と。

それに、
自分の中で「心に残る演奏」の多くは
中学生や高校生の頃に多い。

知識とかウンチクではなく、
自分の求めるままに
欲望と感性のままに
素直に聴いていた気がするから。

そんな感じで、
高校生になったら
割と当たり前の感じで
歌やいろんな楽器…
フルートも打楽器、
もちろんヴァイオリンとも演奏して、
副科でチェロ弾いて
授業たまに抜け出して
チケット取りの電話をしたり
オペラ見に行ったりしていた。

学校の先生の演奏会にもよく行って
今につながる様な出会いがあったり、
親しくなったり、
ゲネプロに入れてもらったり
楽屋で文句も言ったり…
その節はどうも申し訳ございませんでした。
生意気な高校生でした。

当時、
「人と演奏する極意は何か?」
と聞かれたら
「足を引っ張らないこと」
「迷惑をかけないこと」
と、即答したと思う。

ソロでもしも失敗したり、
止まっちゃったりしたら
1人で恥をかけばいいし
特に人に迷惑はかからない。

でも、
伴奏だとそうはいかなくて
「足を引っ張ってはいけない」
「迷惑になってはいけない」
という、
責任感と意地みたいなところで
勝負していた気がする。

「…本当は、私のこと
どう思ってるのかなぁ?」
「これでいいのかなぁ?」
「本当は歌い難かったりしないかなぁ…?」

そんな訳で、
本番の時、特にコンクールなんかの時は
ソロよりも緊張していたけれど
同時にそれを見せない様にもしていた。
伴奏が緊張したら
歌い手とか楽器の人は
もっと緊張しちゃう気がしたから。

…でも、
歌い手の人って
本番に強いのよネェー、
どーなってんのかしら!!

今思えば
「足を引っ張らない様に」
「迷惑をかけない様に」
っていうのは、
別に伴奏するときに限った話じゃなかった
気もする。

何か、自分の欲求を、こう、
上手く表現できないというか、
上手くカタチにできなかった様な
気がしますね。
出しどころに困る、というか。
あるいは、
どこかで誰かに認められたかったか。

「足を引っ張らない様に」っていう
責任感は
まぁ今でも大事だとは思うのよ。
けど、
「足を引っ張らない様に」っていう
萎縮や遠慮はいらないかな。
「責任感」でいい。

あー。
「責任感」って、
演奏する上で大事にしていることかもしれない。
自分が伴奏「される」立場だったとして
足を引っ張られたかどうかはともかく
ベストは尽くそうよ!
って思うもん。

うーん、
別にソロとか伴奏とか関係ないかな。
演奏するなら、
そこに責任は持ちたいよ。
「ベストを尽くす」っていう、責任。

多分、
演奏だけでもなくて
だから、その、自分のやることへの
「責任」?!

…とまぁ伴奏にまつわる「スタート」と見せかけて。
人付き合い、
「自分」というものを探る上で
ヒントになるかもしれない。

「人に迷惑をかけない様に」
って思って窮屈になる人がいたら
「自分の責任で」
「ベストを尽くそう」
って置き換えてみるのも方法かな。

音楽を通じて得た経験は
「他のこと」にも通じるよ!
という話ができるのが、私の理想。

「自分に責任を持つこと」
「人のせいにしないこと」

スタートは、ここから。

つづく。

それでは、また!
仲村真貴子