職業不詳?!

こんばんは。仲村真貴子です。

先日、久し振りにドイツでお世話になった大先生、Alejandro Ramirezと長電話を。

大先生、と言っても彼は歌い手。声楽科の教授。

私がお世話になったAndreas Pistoriusは、古きよき時代のピアニスト、そしてまるで仙人のような人でした。私がやること、なすこと、全てお見通し。

「何を大事に思って、何を美しいと思うのかは、レッスンで教えることはできない。ピアニストは世に溢れているから、苦労したらいいよ!」

…と、まぁこれを笑顔で心からよく言われました。本当にいい意味で音楽オタク、音で語れる、本当に尊敬すべき師匠です。伴奏助手として活動できたのも、いつもPisutoriusが認めてくれていたから。それを忘れたことはありません。

Ramirezは…大変な親日家でもあるし、同業者でないところから、何でも言いやすかったのかもしれません。もう、しょーもない、程度の低い冗談から、大真面目な哲学的な話、時には大喧嘩まで、もう何でもアリ。一時期、険悪になったこともあったけど、今もたまに聞きたいことがあると連絡を。

年明け、帰りの香港の空港でWi-fiを繋いだら、ちょうど電話が。
ちょうどシャンパンを手に持っていたので、
「明けましておめでとう。あ、Libiamo!!」
と言ったら、その場で「乾杯の歌」を歌ってくれてしまう感じ。(笑)両親はもう大喜び。さすがウィーンでこの役でデビューしたおぢさん、今年も歌上手いね!という感じです。(笑)

先日は、しょーもない冗談を交えつつも、ほぼずっと真面目な話を。
サヴァリッシュ、バレンボイムと共演したときの話なんかもありつつ。

「…ところで、日本人の歌い手について、どう思う?」
という、ちょっと尖った質問を敢えてしてみたのですが。
「生徒については、あまり日本人を見ていないからあまり言えないけれど、『日本人だから』っていうのは、特にないんじゃないかなぁ。一人、日本人でいい歌手だと思う人を知ってる。彼女、今東京でピアニストやってるけど。」

……えーと、誰のことを言ってるんでしょうか???(笑)

実は私、歌い手に間違われることが非常に多い。伴奏しに行って、「歌い手の方にご説明が…」とか、ドイツでも本番前に髪を直していて「今日、何歌うの?」って聞かれたりとか。(笑)ついでに最近、他の職業からのスカウトが多数。

ピアニスト、そんなに不向きですかね?(笑)
まぁ、小指とか超短いし。
遅ればせながら、自分の職業について、見直すべきときが来ているかもしれません。(笑)

…そんな愛すべき尊敬すべきおぢさんの録音を。
楽譜も録音も、本当にたくさんもらって(…「頂いた」というより「もらった」という方がしっくりくる。)、どれもこれもいろいろあるのだけど。もしかしたら、私はこれが一番好きかも知れない、という、メンデルスゾーンの「詩篇」。あのしょーもない冗談をいうおぢさんが、一体どんな顔をして歌ったのか?!という疑問もありつつ、そんなよこしまな考えを詫びたくなるような歌です。57分44秒から聴けるので、是非。

https://www.youtube.com/watch?v=iLszfF8QvAs

それでは、また!
仲村真貴子